「隙がない」と言われたことはありますか。
褒められたのか、そうでないのか、判断がつきません。
きちんとやっているつもりなのに、どこか距離を置かれている気もする。
先に書いておくと、私はそう言われたことがありません。
大手企業で管理職をしていますが、面と向かって「話しかけにくい」と言われた記憶はない。
それでも、安心はしていません。
距離は、言葉になって出てこないからです。
「隙がない」と言われる人は、たいてい仕事ができる

穴がないから、入る場所がない
「隙がない」は、悪口として使われるとは限りません。
準備が丁寧で、抜けがない。
指摘される前に、答えを用意している。
困っている姿を見せない。
判断が速いので、相談される前に結論が出ている。
どれも、短所ではありません。
だから困ります。
直せと言われても、直す対象が見当たらない。
雑にしろ、ということなのか。
ミスを増やせ、ということなのか。
そんなわけがありません。
手を抜いて解決する話ではないのは、言われた本人がいちばん分かっています。
問題は、能力のほうではないと思います。
穴がないと、相手が近寄ることができる場所がない。
それだけのことです。
そして、入る場所がない相手には、どうやって近づいてよいのかわからない。
近づく道すじが見えないからです。
「隙がない」と言われていなくても、見えない距離はできている

信頼があると、むしろ言葉は少なくなる
部下との距離は、はっきりした形で現れません。
態度が悪いわけでも、避けられているわけでもない。
ただ、よそよそしいとしか言いようのない感じが残ります。
そして、こちらにも壁ができます。
相手が壁を作っていると、こちらも無意識に遠慮しています。
距離は片方だけの問題ではなく、たいてい両側から作られています。
厄介なのは、遠慮しているのを相手に見せてはいけないことです。
見せた瞬間に、距離が確定します。
そして、判断をもうひとつ難しくすることがあります。
本当に信頼関係があると、言葉はむしろ少なくなります。
よく話しているから通じている、とは限りません。
微妙なときほど言葉数が増えて、そこに遠慮が混じります。
会話の量だけでは測れないということです。
だから「最近よく話しているから大丈夫だ」と思っているときほど、確かめる必要があるのだと思います。
隙とは、完璧に固めないこと

全体感で話し、課題も出して、一緒に作る
では、どうするか。
私がやっているのは、完璧に固めて持っていかないことです。
説明するとき、隙のないストーリーを作り込んでから話す、ということはしません。
全体感を伝えて、課題になりそうなところも一緒に出します。
「ここはまだ決まっていない」「ここが引っかかっている」と、先に言ってしまう。
そこから、一緒に作り込んでいきます。
このとき見ているのは、相手の目線です。
どこまで理解しているのか。
どこまでなら理解できるのか。
そこに合わせて、話す粒度を変えます。
完璧に整った説明には、聞いている側が入る場所がありません。
正しすぎて、口を挟めない。
課題が残ったまま渡すと、そこに相手が関与できる余地があります。
そして一緒に作ったものは、相手のものにもなります。
渡されたものと、作ったものでは、その後の動きが変わります。
どこを空けるかは、相手によって違う

相手を見ていなければ、隙は作れない
ただ、同じ緩め方が全員に効くわけではありません。
理解の速い人に課題ばかり並べると、頼りなく見えます。
慎重な人に全体感だけ渡すと、どこから手をつけていいか分からず、不安になります。
どこを空けるかは、相手によって変わります。
そして、それを決めるには、相手を見ているしかありません。
理解度も、距離の取り方も、人によって違うからです。
「隙がない」と言われるのは、隙の作り方を知らないからではないのかもしれません。
相手を見る前に、自分の話し方を固めてしまっている。
そういうことが多いのだと思います。
隙は、自分の中だけで作るものではなく、相手を見て決めるものです。
最後に——開いておくのは、簡単ではない

こちらが開いたからといって、すぐに距離が縮まるわけではありません。
距離は両側から作られています。
こちらが開いても、相手の壁はしばらくそのままです。
そのあいだ、開いているのはこちらだけという状態が続きます。
正直、しんどい。
それでも閉じてしまえば、距離はそこで固定されます。
オープンマインドでいることが大切だと分かっていても、簡単ではありません。
日々、修行のようなものだと思っています。
※相手によって空ける場所が違うということは、相手のタイプを見分ける必要があるということです。そこを体系的に扱っている講座もこの記事に書いていますので気になる方はこちらもどうぞ。
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