何を言っても動かない部下がいる。
面談もした。
任せてもみた。
褒めてもみた。
それでも、目に力がない。
そして——こういう記事を検索している自分に、少し疲れている。
先に、答えを書きます。
- やる気がないのではありません。力の向きが違うだけです。
人は必ず、何かに力を出しています。ゼロの人はいません。早く帰りたい、放っておいてほしい、別のことがしたい。それも立派な方向です。こちらが見たい方向と、違うだけ。 - そして——全員を動かす必要は、ありません。
合気道は、争わない武道です。攻めてこない相手を、わざわざ倒す必要がない。
なぜ「向き」の話になるのか。
合気道では、相手の力の方向に逆らわず導きます。
すると相手は、誘導されていることに気づきません。
自分の行きたい方に、行っているのだから。
今日はこの2つを軸に書きます。
読み終えるころには、明日やることが4つ、手元に残っているはずです。
「やる気がない」は、5つの別物が同じ顔をしている

原因が違えば、打ち手も全部違う
まず、分けます。
「やる気がない」に見える人の中身は、たいていこのどれかです。
- 何をやっても評価されないと思っている
- 能力に自信がない
- 成功体験がない
- そもそも頑張った経験がない
- 働きたくない
全部、同じ顔をしています。
会議で発言しない。
指示を待つ。
定時で帰る。
外から見えるものは、区別がつきません。
でも、打ち手はまったく違います。
評価されないと思っている人に成功体験を積ませても、届きません。
自信がない人に「もっと自分で動け」と言えば、逆効果です。
ひとまとめにしているかぎり、何をやっても外れます。
私はここで、長いあいだ外し続けました。
そもそも、全員を動かす必要はない
合気道は、攻めてこない相手を倒さない
方法の前に、荷物を一つ下ろしてください。
合気道は、争わない武道です。
相手が攻めてこないとき、わざわざ倒す必要がありません。
何もしてこない人を投げ飛ばすのは、合気道ではない。
自分を殺しにきた相手すら、最後には友達にする。
それが究極だと教わりました。
職場も、同じだと思っています。
いま、動かなくていい人がいます。
全員を同じ熱量にしなければいけない——それは、たぶん思い込みです。
そしてその思い込みが、いちばんこちらを消耗させます。
これは、見捨てることではありません。
攻めてこない相手と、いま争う必要がないというだけです。
必要になったときに、向き合えばいい。
「あの人をどうにかしないと」と思い続けているなら、その荷物は、一度下ろしていいと思います。
動いてほしい人には、押さない

相手の行きたい方向のまま導けば、抵抗が生まれない
では、動いてほしい人にはどうするか。
押しません。
二つのやり方があります。
一つは、自分の力で投げる。
相手の動きに関係なく、こちらが強ければ投げ飛ばせます。
ただの力比べです。
もう一つは、合気道のように相手の力の方向に逆らわず、そのまま導く。
ベクトルはそのまま。
勢いもそのまま。
それを投げる力に転換するだけです。
そして——このとき、相手は自分が誘導されていることに気づきません。
自分の行きたい方に、行っているのだから。
仕事も同じです。
「やる気を出せ」は、力で投げようとしている状態です。
相手がどこへ向かっているのかを見て、その方向に仕事を置く。
押していないのに、動きます。
「それは、操作ではないのか」
行き先を決めているのは相手で、こちらは邪魔をしていないだけ
ここで引っかかる人がいると思います。
気づかせずに誘導するのは、人を操っているだけではないか。
もっともな疑問です。
私も最初、そう思いました。
違いは、一つです。
行き先を、誰が決めているか。
- 操作:相手が行きたくない方向へ、気づかせずに連れて行くこと
- 合気道:相手が行きたい方向に、逆らわないこと
こちらは、邪魔をしていないだけです。
そしてもう一つ。
相手を自分の望む方向に向けようとした瞬間、力比べに戻ります。
そして必ずぶつかる。
操作しようとすると、技はかからなくなる。
皮肉ですが、そうなっています。
力を出していない相手には、置く場所を変える

崩れる位置は、その人の中にすでにある
「向きに乗る」と言われても、そもそも向きが見えない人がいます。
棒立ちで、押しても引いてもこない。
「やる気がない」と見える人は、たいていこの状態です。
それでも、技はかかります。
身体が動いていなくても、気の動きを読むからです。
だらっとしている相手の腕を、三角点(※体勢が崩れる一点)に落とす。
それだけで、簡単に崩れるのです。
力は加えていません。
ただ、崩れる位置に置いただけです。
そして大事なのは、崩れる位置は、こちらが作るものではないということです。
最初からその人の中にあります。
見つけるだけ。
仕事も、同じだと思っています。
やる気を注入するのではありません。
その人が動きやすい位置に、仕事のほうを置き直す。
では、動きやすい位置を、どう見つけるのか

大きく任せず、小さく区切って、反応を見る
見ただけでは分かりません。
合気道でも、構えを見ているだけでは分かりません。
正確に言うと、この辺りだろうということは分かっても、相手の気の動きによって微調整が必要です。
つまり、相手に触れながら、抵抗なく崩れる一点を探す。
仕事も同じで、小さく渡してみるしかない。
実際にあった話を書きます。
仕事を不安に思っている部下がいました。
任せると、止まる人です。
最初は、手取り足取りやりました。
そのときそのとき、細かくキャッチボールをしながら進める。
そこから少しずつ、「ここまでできたら教えて」と区切っていきました。
任せる範囲を、小さく、少しずつ広げる。
密な報連相を続けているうちに、本人がそれに慣れてきます。
そしてある時期から——こちらが言わなくても、「これは報告しておいたほうがいい」「これは事前に相談してから進めたほうがいい」という感覚を、自分で掴み始めました。
その感覚を掴みかけていることは、こちらにも分かりました。
だから、任せる範囲をさらに広げても、安心して見ていられる。
本人が、任せてもらったことで生き生きとしていました。
もちろん、たまに漏れは出ます。
そのときは、ちゃんと教える。
「そうか、上司はここを見ているのか」と分かってもらえるように。
振り返って思うのは、私はやる気を出させていない、ということです。
やったのは、動ける大きさに、仕事を区切ったことだけ。
生き生きしたのは、そのあとでした。
やる気は、原因ではなく結果だったのだと思います。
それでも動かないなら、それは技術の問題ではない
最後は、本人が動こうとするかどうか
最後に、正直に書いておきます。
ここまでやっても、動かない人はいます。
人は、自分で動こうとしないかぎり、どんなテクニックでも動きません。
その気があるかどうかは、外からは見えません。
ひとつだけ手がかりがあるとすれば、うまくいかなかったときに悔しがるかどうかです。
何も感じないなら、心はもうそちらを向いていません。
(関連記事▶︎悔しさは「好き」の証拠)
合気道は、それでも動かせます。
ただし、15年という相当の稽古と修練をしても、まだまだ完全にはできません。
だから——部下が動かないとして、それがあなたの関わり方の不足だとは限りません。
そしてもう一つ、道場で教わったことがあります。
武道は、自分だけでは完成しません。
相手と共に完成させていくものです。
技は、かける側だけでは成立しません。
受ける側がいて、初めて技になる。
部下育成も、たぶん同じです。
こちら一人で完成させるものではないのです。
今日の稽古
- 「やる気がない」の原因を分ける
- 小さく振って、反応を見る
- 抵抗が返ってこない方向に、仕事を置き直す
- 攻めてこない人は、いまは動かさない
今日も私は、押さずに動いてもらう稽古を実践する。
💬 「崩れる位置が、見つけられない」という方へ
上の4つは、今日から無料でできます。
これで十分な方も多いと思います。ただ、小さく渡して反応を見るには、回数が要ります。
私は15年、ぶつかりながら覚えました。外した回数のほうが、ずっと多い。部下が5人いて、一人ずつ探る時間が取れないなら——先に「人にはどんな判断の軸があるのか」を知っておくと、外す回数が減ります。
もちろん、型を知っていることと、身体でできることは別です。それでも、うまくいく確率を上げることはできます。
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