大谷翔平が読む中村天風『運命を拓く』。最初に禁じられたのは、考え方ではなく言葉だった

口に出す言葉を選ぶ

「前向きに考えろ」と言われても、難しい。
考え方は、そんなにすぐ変わりません。

でも——中村天風氏が最初に求めたのは、考え方ではありませんでした。
言葉です。

なぜか。
言葉は、身体に指令を出すからです。

私は道場で、それを確かめています。
「できない」「無理だ」と口にした瞬間、気が止まる。
気が流れなくなって、技がかからない。

今日は、なぜ考え方より言葉が先なのかを書きます。
読み終えるころには、今日から一つだけやめられることが決まっているはずです。

目次

『運命を拓く』に書かれていること

天風が最初に禁じたのは、思考ではなく言動

中村天風氏の『運命を拓く』は、大谷翔平選手の愛読書として知られています。

ただ——あの本の何が響いたのかは、本人にしか分かりません。
私に書けるのは、同じ本を読んだ人間が、道場で確かめたことだけです。

その本に、こういう一節があります。

だから今日からはいかなることがあっても、また、いかなることに対しても、かりそめにも消極的な否定的な言動を夢にも口にするまい、また行うまい。そしていつも積極的で肯定的の態度を崩さぬよう努力しよう。
同時に、常に心をして思考せしむることは、”人の強さ”と”真”と”善”と”美”のみであるよう心がけよう。
たとえ身に病があっても、心まで病ますまい、たとえ運命に非なるものがあっても、心まで悩ますまい。否、一切の苦しみをも、なお楽しみとなすの強さを心にもたせよう。
(中村天風『運命を拓く』より)

読み返すたびに、順番が気になります。

一つ目が「口にするまい、また行うまい」。
思考の話は、その次に出てきます。
「常に心をして思考せしむることは——」と。

普通は逆です。
自己啓発の本はたいてい「まず考え方を変えろ」から始まります。

天風氏は、言葉から始めています。

なぜ、考え方より言葉が先なのか

言葉は、身体に指令を出すから

道場での話です。

難しい技があります。
何度やってもできない。
そのとき、つい口に出てしまうことがあります。

「できない」
「無理だ」

そう口に出した瞬間に、気が止まります。

「気」というものを、私はまだうまく説明できません。
目にも見えないし、証明もできない。

ただ、止まったことは分かります。
そして、技はかからない。

言葉が、身体に指令を出しているのだと思います。

考え方は、変えようとしてもすぐには変わりません。
でも、口に出す言葉は、いま選べます。

天風氏が言葉から始めたのは、そこがいちばん先に変えられる場所だからではないでしょうか。

周りが後ろ向きでも、自分は選べる

相手の言葉に、こちらが合わせる必要はない

稽古では、相手が消極的な言葉を口にすることもあります。

そのとき、こちらまで合わせる必要はありません。
周囲がどうであれ、自分が積極的な言葉でいることは、できます。

これは、天風氏が「自分への誓い」として書かれている理由だと思います。

「人に消極的な言葉を言わせるな」とは書いていない。

他人は変えられません。
変えられるのは、自分の口から出るものだけです。

道場で、否定的な言葉を聞かない理由

禁じられているのではなく、続けている人が自然にそうなるから

道場に、言ってはいけない言葉のリストはありません。
そういう決まりは、特にない。

それでも、否定的な言葉を聞く機会は、少ないです。

合気道の技は難しい。
何年やってもできないものがあります。

それでも、みんな前向きに稽古しています。

禁止されているからというより、言葉を選んでいるうちに、そもそも否定的な言葉を口にする必要がなくなっていく。
そういう順番なのだと思います。

「心まで病ますまい」は、いつでも成り立つのか

消耗しきっているときは、言葉より先に休息が要る

一つ、正直に書いておきます。

たとえ身に病があっても、心まで病ますまい
今の私にとっては、とても好きな言葉です。

でも、この言葉が自分に届かなかった時期があります。
心身を壊して休職したあのとき、「積極的な言葉を口にしよう」と言われても、たぶん何も響かなかったと思います。

言葉を選ぶには、選ぶだけの力が要ります。

これは、自分で立てる人のための誓いです。
いま立てないなら、言葉より先に、休むほうが順番として正しい。
身体が、心が、休めと言っているサインです。

今日の稽古

今日一日、「できない」「無理」を口に出さない。

言いそうになったら、「まだできない」に変える。
「まだ」を足すだけで、気は止まらない。
心で思うのは、自由でいい。

今日も私は、言葉で自分に指令を出す稽古を実践する。

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■ この記事を書くにあたって読み返した本

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この記事を書いた人

合気道のまさ|合気道三段

人生のどん底から私を救ったのは、名著を「稽古」のように読み返す習慣と、合気道でした。

このブログでは、名著の知恵を合気道の身体感覚で読み解き、しなやかに生きる「型」をお届けします。

かつての私のようなあなたを、心から応援しています。

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