合気道の稽古で、相手を崩そうと考えた瞬間に、技が止まることがあります。
考えたとたんに、身体に力が入る。
力が入ると、相手はそれを感じて無意識に反発する。
崩れません。
相手が崩れるのは、崩そうと考えてからではありません。
気を出して、合わせて、抜く。
すると相手は崩れます。
中村天風氏は『運命を拓く』で、心とは気の働きに対する名称だと言います。
気の働きがなければ、心という現象は生じてこない。
順番が逆でした。
考えてから気が動くのではなく、気が動いて心が生じている。
崩そうと考えると、技は止まります
合気道では、力で相手を動かそうとはしません。
腕の力で押しても、引いても、相手はその力に反応します。
力が強いほど、相手はそこを支点にして受け止めやすい。
崩そうと考えると、その考えに身体が引っ張られて力が入ります。
考えが先に動くと、気が出る前に相手に動きを感知されます。
中村天風「心は、気の働きに対する名称である」

心というものは、人間の生命の本質であり、絶対に眼に見えない霊魂という気の働きに対する名称である。気の働きがないかぎり心という現象は生じてこない。さらにわかりやすくいえば、心というものは、霊魂という気の働きを行なうための存在であり、心が思ったり考えたりすることによって霊魂の活動が表現される。
(中村天風『運命を拓く』より)
天風氏の言う順序は、はっきりしています。
おおもとにあるのは気です。
心は、その気の働きに付けられた名前です。
心が思ったり考えたりするのは、気の活動が表に出てきた姿だということです。
普段は、逆に考えがちです。
まず心で思うことで気というものができる。それから身体が動く。
そう思っています。
天風氏は、いちばん手前に気があると説きます。
いや、そもそも心と気を分けて考えることすら、普段はありません。
気を出して、合わせて、抜く
道場での順序も同じです。
まず気を出す。
相手に向かって、気が途切れないようにする。
次に、相手と気を合わせる。
ぶつけるのではなく、相手の中心と気を結ぶ。
そして、抜く。
力を入れて引っ張るのではなく、脱力によって一瞬で力を消す。
この三つのどこにも、「崩そう」という思惑は入っていません。
崩してやろうと考えてから動いたときは、たいていうまくいきません。
気が先に動いたときは、考える前に相手が崩れています。
道場では、気を当たり前に使います

「気」という言葉は、普段の生活では怪しく聞こえます。
スピリチュアルなものに感じる人も多いと思います。
ただ、合気道の稽古では、気を出す、気をコントロールするという稽古を当たり前にやります。
気を使うことが、特別なことではなくなります。
そうなると、天風氏の言う「気」も、自然に受け入れられます。
気が動く。
そのことで心が生じる。
気がおおもとである。
頭で理解しようとすると難しい話ですが、身体で何度も経験していると、そういうものだと分かってきます。
合気道を通じて、目に見えない本質のようなものを身体で知ることができる。
それも、合気道の魅力のひとつだと思っています。
同じ仕事量でも、気が出ている日は疲れ方が違います

仕事でも、同じことを感じます。
気持ちが消極的になっているときは、気が出ていません。
そういうときは、いろんな仕事が押し寄せてくるように感じます。
ひとつひとつが「やらされ仕事」に見えて、押しつぶされそうになります。
気を出しているときは、違います。
積極的というのは、気が出ている状態のことだと思っています。
気が出ていると、仕事に主体性が出てきます。
前に前にアイデアが出るし、手も動く。
やらされている感じがありません。
そして、仕事量の割に、疲れ方が少ない。
同じ仕事でも、気が出ているか出ていないかで、ストレスの感じ方が変わってきます。
天風氏の言葉に戻ると、心は気の働きに付けられた名前でした。
そうだとすると、気持ちが積極的であることと、気が出ていることは、別々のことではありません。
だから、常に気持ちを積極的にしておくようにしています。
それは、気を出しておくことと同じだからです。
心と身体を保っていくうえで、私はここがいちばん大きいと感じています。
今日の稽古

考えてから動こうとして、身体が固まるとき、こう自分に問いかける。
「自分は今、積極的なのか」と。
今日も私は、気を出す稽古を続ける。
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