応募しても、書類で落ちる。
面談で実績を聞かれても、差し出せるものが思いつかない。
私は31歳で転職し、その数ヶ月後に休職しています。
休職中にもう一度転職活動をして、面談まで行って、決めませんでした。
二度の転職活動をしている間ずっと心の底にあったのは、落ちる怖さではありませんでした。
自分でも気づいていない無能さがあって、転職活動をすればそれが露わになるのではないかという怖さでした。
とくに二度目は、材料がありました。
一度目の転職先で、私は数ヶ月で倒れています。時間外が月200時間を超える職場でした。
そのことが、自分には能力がなかったという証明になるのではないかと思っていました。
人に知られるのも恥ずかしい。
自分で知るのも怖い。
あえて転職活動をしなければ、気づかずに過ごせます。
しかし、実際には無能さの証明というものは出てきませんでした。
心が落ちているときに、重大な決断をしない
二度目の転職活動を途中でやめたのは、その怖さに負けたからではありません。
頭の片隅に、ひとつの考えがありました。
心が落ちているときに、重大な決断をしてはいけない。
どこかで読んだ一行だったと思います。
当時はなんとも思っていませんでした。
それが、いちばん弱っているときに出てきました。
いま振り返っても、あの判断は間違っていなかったと思っています。
怖さと判断は別のものでした。
9社出して、内定は1.6件です

マイナビの「転職動向調査2025年版(2024年実績)」に、2024年に転職した人の実績が出ています。
平均応募社数は9.0件。面接を受けた企業は3.8件。内定は1.6件でした。
応募した企業のうち、面接に進めた割合は42.1%です。
9社に出して、7社以上は落ちています。
半分以上は、書類の段階で落ちています。
これは、転職できた人の数字です。落ちた人の話ではありません。
内定を得た人でも、それだけ落ちています。
活動期間も出ています。転職を意識してから内定までが3ヵ月未満だった人は62.3%。一方で、1年以上かかった人も12.1%います(前年は5.9%)。
40代・50代の転職が、いま増えています

もうひとつ、新しい調査があります。マイナビ「転職動向調査2026年版(2025年実績)」です。
2025年の正社員の転職率は7.6%で、調査開始以降の最高水準でした。
とくに40代・50代が上昇していて、2021年から右肩上がりが続いています。
同じ調査で、転職した人の52.6%が、前職でキャリアの停滞を感じていたと答えています。
きっかけには、50代の「定年までのキャリア予定を知らされて、この先の役職がわかっていた」という声がありました。
中途採用そのものも、例外ではなくなりました。
日経転職版の記事によると、リクルートワークス研究所が3933社を調べたところ、2025年度下期に中途採用をした企業は84%でした。
同じマイナビの調査では、転職後の平均年収は533.7万円で、転職前より19.2万円増えています。ただし50代だけは4.5万円下がっています。必ずしも年収が上がるとは限りません。
動いてみた一度目は、キャリアアップになりました

怖さを抱えたまま、一度目は動いています。
結果だけ書けば、転職は成功しました。
名前の知られた会社に移り、年収は大幅に上がりました。福利厚生も充実しました。
無能だという証明は、出てきませんでした。
そのあと倒れたのは、能力の問題ではなく、時間外が月200時間を超える働き方の問題でした。
転職活動をする前は、自分に値段がつくのかどうか、まったく分かりませんでした。
動いてみて、初めて分かりました。
道場では、できない自分が毎回露わになります
合気道の稽古では、できない自分が毎回出てきます。
さっきできたことが、もうできない。
いま言われて、頭では理解しているはずなのに、そのとおりに身体が動かない。
これは実はすごいことだと思っています。
できない自分を認める訓練になるからです。
万能感を持っている暇がありません。年齢も関係ありません。
できないことを認めて、そのうえで地道に稽古するしか、上達する方法がない。近道はありません。
道場では、黒帯であろうとなかろうと、基本技すら完璧にはできないことが毎週露わになります。
そこでは、それが恥ではなく、稽古の前提になっています。
合う会社は合い、合わない会社は合いません

無能だと証明されるのが怖い。
この気持ちは、たぶん誰にでもあります。
派手な実績を持っている人でも、動くときには同じことを考えています。
ただ、合う会社は合いますし、合わない会社には合いません。
それは能力の話だけではなく、組み合わせの問題です。
自分を市場に出してみないと、その組み合わせは見つかりません。
しかも、求人のすべてが表に出ているわけではありません。
公開されていない求人は、エージェントを通してしか届きません。
自分が無能かどうかを確かめる場ではなく、自分に合うキャリアを考えるきっかけとして使う。
そのほうが、得られるものは大きくなります。
値踏みされるのが怖いなら、値踏みされない範囲から始めればいい。
求人の条件を眺めるだけなら、誰にも知られません。

最後に——市場価値を確かめることと、値踏みされることは違います

転職活動をしても、無能だという判定は出てきません。
出てくるのは、いまの自分の経歴に関心を持つ会社があるかどうか、という情報です。
一度目に動いたときも、出てきたのは条件でした。証明ではありませんでした。
求人を見て、話を聞いて、それから決める。
合う会社があるなら進めばいいし、なければやめればいい。
決めるのは自分です。
私は二度目を決めませんでした。
その会社に20年います。それも選択のひとつだと思っています。
ただ、いまの自分に関心を持つ会社があるかどうかを知らないままでいるより、知ってから決めるほうが選べる幅は広がります。
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