「優しい人は管理職に向いてない」と言われますが、怒ったほうが楽なだけです

優しい管理職

優しすぎるのではないか。

部下に強く言えない自分は、管理職に向いていないのではないか。
そう思ったことがあるかもしれません。

私も、自分は優しすぎるのではないかと思うことがあります。

ただ、怒らないでいるのは、優しいからではありません。
怒らないほうが、人は動くからです。

合気道の稽古では、相手を強く引っ張るほど技を返されます。
導けるのは、触るか触らないかくらいの接触のときです。
15年以上続けていますが、この感覚が腑に落ちるまでにずいぶんかかりました。

優しい人が管理職に向いていないのではありません。
怒らずに動かす方法を、誰も教えてくれないだけです。

目次

「優しい人は管理職に向いてない」と言われる理由

管理職に向いていない人の特徴を調べると、決断が遅い、人に任せられない、数字が苦手、といった項目が並びます。

ただ、そのほとんどは人事や経営側に向けて書かれたものです。
適性を見極める側の視点であって、見極められる側の視点ではありません。

実際に悩んでいる人の入口は、もっと具体的なはずです。

注意すべき場面で言葉を選んでいるうちに、タイミングを逃す。
指示したことが期限までに終わっていない。それでも強く言えない。
他の管理職は厳しく指導しているのに、自分だけが甘いように見える。

そして、いちばん怖いのはこれです。

舐められているのではないか。

舐められると、人は動いてくれません。
これは事実です。

私も、その不安を持っています。
怒らない管理職には、この不安が常について回ります。

怒ったほうが楽だと、私も思います

怒る上司

はっきり言うと、怒ったほうが楽です。

強い権限を振るってやらせれば、話は早い。
怒っていれば、相手はトラブルを避けたいので、渋々でも動いてくれます。
反論もされにくくなります。

短期的には、怒るほうが効率がいい。

だから私は、怒る上司を否定しません。

でも、楽な道があることを知っていて、そちらを選んでいないだけです。

ただ、渋々動いた仕事には続きがあります。
渋々やった人は、次も渋々です。

指示がなければ止まってしまいます。
「言われていないので」と言うようになります。

怒りで動いた分だけ、その人は自分で判断しなくなります。
怒って動かすたびに、自分の仕事が増えていく。

そういう構造になっていきます。

強く引っ張ると、技を返される

厳しく強引な上司

合気道では、相手の手首を取って導く稽古をします。

始めたころは、ぐっと引きました。
こちらに来てほしいのだから、引くのが自然だと思っていました。

引くと、返されます。
相手は反射的に踏ん張ります。

引かれた方向と逆に力が出る。
その力がそのまま自分に返ってきて、こちらが崩れます。

触るか触らないかくらいの接触で、相手をこちらに引き込むことができる。
この感覚が分かるまでに、かなり時間がかかりました。
誘導しているのに引かないなんて、思いもしませんでした。

引かないほうが動く理由は、あとから分かりました。

強く引くと、相手の中に「抵抗する対象」ができます。
何に抵抗すればいいかが、はっきりしてしまう。
触れるか触れないかの接触では、抵抗する相手が見つかりません。
だから相手はスーッと導かれていきます。

怒るのと同じです。

強く言えば、相手の中に「反発する対象」ができます。
指示の中身ではなく、こちらの態度に向き合うことになる。

私自身、小さなことで怒られたとき、感情のプレッシャーばかりを感じて、言われている内容が耳に入りませんでした。

「舐められている」と感じたとき、私は普段通りに接します

舐められているかどうかは、はっきりとは分かりません。
面と向かって言われることはないからです。

ただ、この人は距離を取っているな、と感じることはあります。

心が通っていないというのは、なぜか通じます。
明確な会話や態度があるわけではありません。

それでも、そこに漂う雰囲気というのは絶対にあります。
では、そう感じたときに何をするか。

普段通りに接します。

他の人と差をつけません。
距離を取られたからといって、こちらから詰めることもしませんし、こちらも距離を取ることもしません。

距離を詰めようとすると、相手はもっと引きます。
手首を強く引いたときと同じです。
こちらが動いた分だけ、相手はその力に反応します。

態度を変えないでいると、相手には反応する対象がありません。
戻ってくるかどうかは、相手が決めます。
こちらが決めることではありません。

実際、しばらくすると自然に元に戻っていることがあります。
何かを話し合ったわけではありません。
こちらが変わらなかった、というだけです。

態度を変えないというのは、我慢とは違います。
相手がどうであろうと、こちらのやることは変わらない。

それだけです。

怒らないだけでは、たしかに足りません

優しいと手間が増える

怒らないと決めると、代わりにやることが増えます。

一人に向かって注意せず、朝礼で全体への周知という形をとる。
何か言ってきたら、その場で判断する。
報告してくれたことには、必ず感謝を伝える。

どれも地味で、時間がかかります。
怒れば一度で済むことを、何度かに分けてやることになります。

怒らないというのは、手間のかかるやり方です。

怒らないやり方が通じない会社もあります

ここまで書いてきたやり方が、どの会社でも通用するとは思っていません。

管理職の型は、会社によってまったく違います。
声の大きい人が評価される場所では、怒らないやり方は「押しが弱い」と受け取られます。
数字だけで管理する文化では、育てる時間そのものが認められません。

自分が向いていないのか、環境が合っていないのか。
中にいると、これが区別できません。

私はいま転職を考えていません。
ただ、自分のやり方に値段がつく場所があるのかどうかは、一度知っておいたほうがいいと考えて、40代50代の管理職に答えてくれる会社を調べました。

社内で評価されない型が、社外では求められていることがあります。
逆に、社外でも同じだと分かれば、腹をくくって今の場所で続けられます。

どちらにしても、知らないままでいるより動きやすくなります。

強く引きたくなる場面は、これからも来ます

怒らないを選ぶ

優しすぎるのではないかと思ったとき、私はこう考えています。
怒らないと決めた時点で、やることは増えています。

全体に伝える。すぐ判断する。報告に感謝する。距離を取られても、態度を変えない。
どれも、怒るより手間がかかります。

触るか触らないかの接触で相手を導けるようになるまで、私は何年もかかりました。
強く引きたくなる気持ちを抑えるところから始まります。

私はいまも、怒ったほうが楽だと思っています。
それでも、引かないほうを選んでいます。

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この記事を書いた人

合気道のまさ|合気道三段

人生のどん底から私を救ったのは、名著を「稽古」のように読み返す習慣と、合気道でした。

このブログでは、名著の知恵を合気道の身体感覚で読み解き、しなやかに生きる「型」をお届けします。

かつての私のようなあなたを、心から応援しています。

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