「私にはちょっと難しすぎる案件だな」
「あの優秀な先輩のようには、到底なれない」
高い目標や新しいことに挑戦しようとする時、私たちは「今の自分」の物差しで未来を測り、自分の可能性に蓋をしてしまいます。まだ何も始めていないうちから、勝手に限界を決めてしまう。
しかし、そこで「できない」と諦めて終わってしまっていいのでしょうか。
私たちが今の自分に失望せず、未来の可能性を信じて一歩を踏み出し、豊かな人生を切り拓いていくためには、一体どのような心の持ち方が必要なのでしょうか。
今回は、稲盛和夫氏が説く「能力を未来進行形でとらえる」という考え方と、合気道の初心者が地道な稽古を通じて技を身につけていくプロセスについてお話しします。
能力を「未来進行形」でとらえる
稲盛和夫氏は、私たちの内に秘められた可能性について、著書『京セラフィロソフィ』の中でこのように語っています。
人生をあきらめ、今のままで一生を終わろうなどと思っている人はいないはずです。心のどこかでは、自分も努力してすばらしい人生を送りたいと思いながらも、難しい課題を出されるとつい、「それは無理です」と言ってしまいます。そうではなく、とてつもなく難しいことでも自分には可能ではないだろうか、努力をすればできるのではないかというように、まず自分を信じることが必要なのです。
今の能力だけで自分を評価するのは、あまりにも惨めではないでしょうか。ですから、自分自身を、現在の能力でもって評価するのはやめましょう。能力というのは未来に向かって開花していくということを信じ、努力していきましょう。「能力を未来進行形でとらえる」とはそういうことなのです。
(稲盛和夫『京セラフィロソフィ』より)
今の自分にできないからといって、無理だと決めつけて諦める必要はまったくありません。
能力とは固定されたものではなく、これからの努力によって「未来に向かって開花していくもの」だからです。
「知っている」「今できる」という狭い枠に自分を閉じ込めるのをやめ、まずは未来の可能性を真っ直ぐに信じる。
その心の構えこそが、人間の能力を大きく引き出す条件なのです。
最初は受け身すら怖い。それでも型は裏切らない
この「今はできなくても、続けた先の未来で開花する」という真理は、合気道の稽古を通じて気づくことができます。
新しく合気道を始めたいと考えたとき、多くの人がこう口にします。
「今さら始めてみても、もうあんな風には動けない」
「そもそも受け身すら怖いから、自分にはさすがに無理だ」と。
確かに、道場に入って数ヶ月程度の稽古で、先輩方のように格好よく美しい技をバシっと決めることなんて絶対にできません。合気道は、数回やったくらいで身につくほど甘いものではないのです。
しかし、今この瞬間にできないからといって、将来もできないわけでは決してありません。
焦る心を一度静め、師範の言葉を信じて、地道に、愚直に一つひとつの型稽古を繰り返していく。
それは、目に見えるような急激な成長を感じられる日々ではないかもしれません。
それでも、前回までは畳に強くぶつかって痛かった受け身が、今日は少しだけ滑らかに回れるようになっている。
これまでさっぱり分からなかった気の出し方が、ほんのわずかだけ指先に感じられるようになっている。
第三者から見れば気づかないほどの小さな変化かもしれません。
しかし本人の中では、確実に身体の感覚が書き換わっていきます。
その小さな「できた」の積み重ねが、一年後、三年後の自分を確実に変え、かつては不可能だと思っていた技を、いつの間にか無意識に繰り出せる実力へと育てていくのです
「今の自分」の物差しで、未来を測らない
ビジネスの現場や日常生活においても、この呼吸はまったく同じです。
私たちは難しい課題や前例のないトラブルに直面したとき、つい「現在の能力」という狭い視野の中で「できる・できない」の答えを出そうとします。
しかし、それでは自分の成長に自分でブレーキをかけてしまうことになります。
「今の私にはできない。けれど、地道に工夫を積み重ねた一年後の私なら、きっとこの問題を捌ききれる」
そうやって未来進行形で自分を捉えることができた時、目の前の壁は「自分を拒む障害物」から「上達のための格好の課題」へと姿を変えます。
仕事も人生も、未来進行形の自分を信じて歩みを進めていく、大きな稽古場にほかなりません。
今日の稽古
高い壁を前にして、つい「自分には無理だ」と諦めそうになっていないか。
「今の能力」という狭い物差しで、未来の可能性を縛ってしまっていないか。
自分の心に弱気が忍び寄ろうとした時、自分にこう語りかける。
「今できないのは当たり前。未来の自分を信じて踏み出そう」と。
今の未熟さに失望せず、未来に向かって伸びていく自分を信じる。
今日も私は、未来進行形で自らを高め続ける稽古を実践する。
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