スキルを磨くほど虚しくなる。稲盛和夫と合気道に学ぶ「哲学」の稽古

木漏れ日の中で差し伸べられた手。稲盛和夫と合気道に学ぶ『働く哲学とあり方』の記事アイキャッチ画像

「マーケティングを学んで成果は出たが、仕事への情熱が湧かない
「KPIは達成しているのに、チームの空気は殺伐としている」

私たちは日々、新しいフレームワークや効率化ツールを学び、「いかに速く、合理的に成果を出すか」というスキルの向上を求められます。
しかし、どれほど優れたスキルを身につけても、その根底に「何のために働くのか」という軸がなければ、いつしか仕事が虚しく感じるようになります。

スキルを磨けば磨くほど、なぜか虚しくなる。
その正体は、「手段」ばかりを追いかけ、「目的」を見失っていることにあるのかもしれません。

目次

スキルより先に「哲学」を持つ

京セラやKDDIを創業し、ビジネスにおける「考え方」の重要性を説き続けた稲盛和夫氏は、著書『稲盛和夫の哲学』の中でこう語っています。

現代社会では、物事を科学的に解釈することばかりに重きを置き、「よき人間、よき世の中をつくっていくためには、どういう考え方をし、いかなる哲学を確立したらよいか」というところが忘れられているのではないかと思います。
科学的かどうかという枠組みを第一義にするのではなく、「どういう考え方が人間にとって、あるいは宇宙にとって必要か」という視点で考えるべきではないでしょうか。
(稲盛和夫『稲盛和夫の哲学』より)

私たちは「数字で見せる」「その根拠は何か」という科学的な枠組みを第一に考えています。
利益を出すための合理的な手法は、もちろん必要です。

しかし稲盛氏は、それより先に「よき世の中をつくるための哲学」が要ると説きます。

根底に「世のため人のため」という哲学がなければ、いかにスキルを身につけようとも、それはただ他人を論破し、勝負に勝つだけの、心身をすり減らす道具になりかねないのです。

「投げてやろう」と思った瞬間、技は死ぬ

この「手段が目的にすり替わる怖さ」を、私は合気道の道場で実感しています。

稽古をしていると、つい「打つ、受ける、捌く」という動きの分析ばかりに夢中になる時期があります。
「どう動けば素早く回転できるか」「どう関節を極めれば相手が動けなくなるか」と、物理的なスキルだけを追ってしまうのです。

たしかに、技の精度を上げることは大切です。
しかし、ただ「強さ」だけを追うのなら、それは相手をねじ伏せるだけの暴力にすぎません。

「相手を一瞬で崩してやろう」
「かっこよく投げてやろう」

そんな欲が頭をよぎった瞬間、無意識のうちに力が入り、無駄に大きな動きをしてしまいます。
すると、それまで滑らかに動いていた相手の身体が、突然ビクともしなくなるのです。

同じ動きをしているはずなのに、心のあり方が自己顕示欲に傾いただけで、技は死んでしまう。

合気道は、相手を打ち負かすことが目的ではありません。
どうすれば周囲と調和し、人として正しく生きることができるのか。
その道を歩むために、武道という手段を使っているにすぎないのです。

あなたのそのスキルは、何のためか

ビジネスパーソンが抱える息苦しさの正体も、この理合いと一致します。

売上の数字を上げること。
論理的に説得する技術を身につけること。

これらはより良い仕事をし、自分と周囲を幸せにするための「手段」です。
それなのに、いつしか「数字を達成すること」「相手を論破すること」自体が目的になり、気づけば職場の空気は殺伐とし、自分の心まで見失ってしまう。

私たちが本当に磨くべきは、「どうすれば勝てるか」という手段だけではありません。
「何のために働くのか」という哲学です。

自分の持っているスキルを、世の中を良くするためにどう使うのか。
その確固たる哲学を持った人間が、周囲と調和し、メンタルをすり減らさない働き方にたどり着くのです。

今日の稽古

数字の達成ばかりに気を取られ、心が悲鳴をあげていないか。
スキルという「手段」が、いつの間にか「目的」にすり替わっていないか。

仕事に虚しさを感じた時、自分にこう語りかける。
「何のために働くのか」と。

強さへの執着を手放し、自分の仕事が世の中にどう役立つのかを見つめる。
今日も私は、人としての道を歩む「哲学」の稽古を実践する。

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この記事を書いた人

合気道のまさ|合気道三段

人生のどん底から私を救ったのは、名著を「稽古」のように読み返す習慣と、合気道でした。

このブログでは、名著の知恵を合気道の身体感覚で読み解き、しなやかに生きる「型」をお届けします。

かつての私のようなあなたを、心から応援しています。

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