「今の自分のスキルでは、この高い目標を達成できそうにない」
「どれだけ努力しても成果が出ず、自分の才能のなさに諦めそうになる」
日々の仕事や新しい挑戦の途中で、私たちは自分の「未熟さ」という壁にぶつかり、強い無力感に襲われることがあります。
周囲の優秀な人と比較しては焦り、勝手に落ち込んでしまう。
そんな心の停滞期を乗り越え、夢を現実のものにするためには、一体どのような思考の武器が必要なのでしょうか。
今回は、稲盛和夫氏が説く「能力を未来進行形でとらえる重要性」と、合気道の「片手取り呼吸法」の稽古を通じて見えてきた、諦めずにやり切るための心の鍛錬についてお話しします。
「現在の能力」で、自分の未来を縛らない
稲盛和夫氏は、夢を実現させるための絶対的な条件について、著書『京セラフィロソフィ』の中で次のように説いています。
なんとしても夢を実現させようと思い努力を続ければ、必ず道は開けます。ですから私は、お金もない、技術もない、何にもないときから自分の能力を未来進行形でとらえるということを武器に仕事を進めてきました。現在のように売上高約七千億円、税引前利益率一〇%超という企業グループになるまで、それをただ一つの財産としてやってきたわけです。
(稲盛和夫『京セラフィロソフィ』より)
新しいことや高い目標に挑戦するとき、多くの人は「今の自分にできるかどうか」という現在の能力を基準にして判断してしまいます。しかし稲盛氏は、順番が逆だと言います。
お金も技術も何もないときだからこそ、「能力を未来進行形でとらえる」ことを唯一の武器にする。
「今の自分にはできなくても、未来の自分なら必ずできるようになっている」と強く信じ、そこに向かって凄まじい努力を重ねていく。
この強い信念こそが、不可能を可能に変える唯一の財産だったと稲盛氏は教えてくれるのです。
「できない」という絶望を、鍛錬の糧に変える
この「能力を未来進行形でとらえる」という厳しさと尊さを、私は合気道で身をもって体感しています。
合気道は、単に相手を力でねじ伏せたり、傷つけたりする武道ではありません。
心身ともに世のため人のため、そして「人格の完成」を目指すという、果てしなく尊い道です。
その大いなる目標に向かっていく稽古の過程は、自分の未熟さとの戦いでもあります。
たとえば、基本技でありながら極めて奥が深い「片手取り呼吸法」の稽古。
相手に手首を掴まれた状態から、相手を引きつけて、半分ほど転換する。
そこから自分の中心に沿って円相に腕を斬り上げて相手を崩し、体(たい)の移動で相手との間合いを詰めて倒す。
言葉にすればシンプルですが、これが難しいのです。
自分の中心で腕を上げようとしても全く上がらない。
体を寄せようとしても、どうしても自分の肘で相手を押してしまい、相手の強い反発を招く。
何度やっても、何年稽古を重ねても思い通りにいかない現実に、時には「自分にはできないのではないか」と諦めそうになることもあります。
しかし、師範がその技を軽やかに決めている姿を目の当たりにする。
そのとき、私の心に再び火が灯ります。
「今はまだできない。けれど、正しい努力を続ければ、自分の技量は必ず上がる。自分も絶対にできるようになる」と、自らの能力を未来進行形で信じて再び稽古に臨むのです。
できない現状に絶望して投げ出すのではなく、「いつか必ず習得できる」と信じて稽古を積み重ねること。
その心の葛藤と克己のプロセスが、技術の向上だけでなく、私たちの心身を強くする最高の「鍛錬」につながっているのです。
人格の完成という「目標」を外さない生き方
ビジネスの現場や日々のキャリアにおいても、この呼吸法と全く同じことが言えます。
難易度の高いタスクやトラブルを前にしたとき、現在の自分のスキルだけで「無理だ」と判断してしまえば、そこから先への成長は完全にストップしてしまいます。
本当に大切なのは、どんなに今が未熟であっても、自分が目指すべき気高い目標を絶対に見失わないことです。
「諦めずに、やり切っていく」
自分の伸びしろを誰よりも自分が信じ、未来から逆算して今この瞬間の努力を積み重ねる
小手先の損得や現在の限界にとらわれず、未来進行形の軸(じぶん軸)を真っ直ぐに保ち続けること。
その一途な姿勢の積み重ねが、結果として自分の中に本物の実力を生み出し、ビジネスでも人生でも必ず素晴らしい道を拓いていくことでしょう。
今日の稽古
目の前の壁を前にして、現在の自分の能力だけで「無理だ」と諦めていないか。
「未来の自分」の可能性を、自分自身で封印していないか。
限界を感じて挫けそうになった時、自分にこう語りかける。
「今はまだできなくても、未来の私は必ずできている」と。
未熟を成長のエネルギーに変え、未来進行形で進んでいく。
今日も私は、目標を実現するための「じぶん軸」を鍛える稽古を続けていく。
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