わずかな成長を認める。カーネギーと合気道に学ぶ「ほめる」稽古

「部下や後輩の成長を思ってアドバイスしているのに、相手に心を閉ざされてしまう」
「相手の成長を促したいけれど、どう伝えれば受け入れてもらえるだろうか」

人を育てる立場では、相手に苦言や改善点を伝えなければならない場面に直面します。
しかし、ただ正論でもって話をするだけでは、相手の耳には届かず、かえって関係がギクシャクしてしまうことすらあります。

相手の心を閉ざすことなく、真摯にこちらの言葉に耳を傾けてもらうためには、一体どのような関わり方が必要なのでしょうか。

目次

よい点をほめられた後だから、苦言が届く

人間関係の機微を深く見つめ、信頼を築くための真理を明かしたデール・カーネギー氏は、相手に耳の痛いアドバイスを受け入れてもらうための鉄則について、著書『人を動かす』の中で次のように説いています。

我々は自分のよい点をほめられたあとなら、相手の苦言に耳を傾けるのはさほど難しくないものだ。
(デール・カーネギー『人を動かす』より)

どれほど正しい助言であっても、最初から問題点ばかりを指摘されてしまえば、人は誰しも防衛本能が働き、心を頑なに閉ざしてしまいます。

しかし、まず自分のがんばりや、できている良い点について心からの賛辞を贈られた後であれば、相手に対する信頼感と安心感が生まれ、その後に続く苦言や改善点に対しても、すんなりと耳を傾ける心の余裕ができるのです。

人を動かし、育てるためには、まず相手の存在や努力を認めることから始めなければならないのだとカーネギー氏は教えてくれます。

しんどさに耐えられるのは、成長を認めてくれる人がいるから

この「まず良い点を認め、伝えることで相手の意欲を保つ」というアプローチの重要性を、私は合気道の稽古で強く実感しています。

合気道の身体操作は非常に繊細で難しく、一朝一夕で簡単に技がかかるようになるわけではありません。
目に見える派手な成果がすぐには手に入りにくいため、もし何の手がかりもなければ、誰もが「自分には向いていないのではないか」と途中で挫折してしまいます。

長く続ける人が出てきにくい武道の一つと言われるのも、この難しさがあるからです。
だからこそ、指導者や先輩として共に稽古で汗を流すときには、意識的な「認め方」が必要になります。

たとえ技そのものはまだ綺麗に完成していなくても、そのプロセスの中にある「一つの動き」ができているか、今日学んだその「一点のポイント」だけでも表現できているか。
そうした部分を、丁寧に見つけてほめていくのです。

それは、経験者でなければ出来ているのかどうかすら分からない、技を受けた者しか感じることができないほどの微細な感覚の変化かもしれません。
しかし、その自分すら気づかないほどのほんの少しの進化をこちらがしっかりと見逃さずに認め、言葉にして伝えてあげる。

合気道の稽古は、何度も何度も受け身をとって、身体的にもしんどいことが多々ありますし、なかなか上手くいかない自分に、自信を無くしそうになることもあります。

それでも、そのしんどさに耐えてキツイ稽古を続けることができるのは、自分の微細な成長をしっかりと見て、ほめてくれる人がいるからです。
その小さな称賛があるからこそ、自分の成長に気づき、もっと学びたいという意欲を保つことができ、道場に向かい続けることができるのです。

相手の可能性を信じて、じぶん軸を育てる

ビジネスの現場や日々のマネジメント、あるいは子育てや人間関係においても、この合気道の関わり方と全く同じです。

まだ仕事に慣れていない後輩や部下に対して、「なぜこれができないんだ」と足りない部分ばかりに目を向けて指摘を重ねれば、相手の意欲は削がれ、しんどさに耐える気力すら失われてしまいます。

本当に優れたリーダーは、相手の「できているポイント」を見つける観察眼を持っています。

まずは相手の地道な努力や、昨日からの僅かな進歩をしっかりと認め、心からほめる。
その温かい土台があって初めて、次に伝えるべき「もっとこうすると良くなるよ」というアドバイスが、相手の心に染み渡っていきます。

小手先のコントロールではなく、相手の伸びしろを信じ、そのわずかながらの成長に寄り添っていく。
そのいたわりと称賛の姿勢が、本当の信頼関係を生み出し、相手を大きく成長させていくのです。

今日の稽古

人の足りない部分ばかりに目を向けてイライラしていないか。
相手の小さな努力や微細な成長を、見逃していないか。

相手に何かアドバイスを伝えたくなった時、自分にこう語りかける。
「相手の良いところをしっかりとほめよう」と。

正論で裁く傲慢さを手放し、いたわりと称賛の心で人と向き合う。
今日も私は、人の可能性を信じ、相手の能力を引き出す稽古を続ける。

■ こちらの記事もあわせて読まれています

■ この記事を書くにあたって読み返した本

¥880 (2026/06/08 21:46時点 | Amazon調べ)
オーディオブックAudible

自分を変えたい、でもどうやって変わったらいいかわからない…

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

合気道のまさ|合気道三段

人生のどん底から私を救ったのは、名著を「稽古」のように読み返す習慣と、合気道でした。

このブログでは、名著の知恵を合気道の身体感覚で読み解き、しなやかに生きる「型」をお届けします。

かつての私のようなあなたを、心から応援しています。

≫ 詳しいプロフィールを読む

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次