トラブルが起きた。
誰かが前に出なければいけない。
分かっているのに、怖くて一歩が出ない。
その一歩を避けると、同じ課題が形を変えて、また追いかけてきます。
松下幸之助氏は『道をひらく』の「信念のもとに」で、昔の商人は店是とのれんを命より大事にした、そこには葉隠の武士道に通じる信念があり、土性骨の源泉があった、と書いています。
仕事で活かせる武士道は、命を削ることとは違います。
やり方が分からなくても、修羅場から逃げないと先に決めること。
一度向き合えば、次は踏み込みやすくなる。
それが土性骨になり、自分も人も生かします。
合気道を15年以上続け、管理職としてトラブルに向き合ってきた私の経験から書きます。
松下幸之助「信念のもとに」
昔の商人は”店是とのれん”というものを、ずいぶん大事にした。ときには、自分の生命よりもこれを大事にした。伝来の店是とのれんを守ることに、商人としての生命をかけて、これに強い信念を置き、誇りを感じていたのである。そのことのよしあしは別として、”武士道とは死ぬことと見つけたり”といったあの葉隠武士の信念に一脈相通ずるようなものがある。そしてそこに土性骨といわれるものの源泉があったのである。
(松下幸之助『道をひらく』より)
昔の商人にとって、店是とのれんは、何があっても守る一線でした。
松下氏は「そのことのよしあしは別として」と断ったうえで、守るものを持つ人の強さを語っています。
武士道の精神は、人を生かす道になった

武士は本来、人を殺める職業でした。
けれど長い歴史の中で、日本人はそれを、人を生かす精神性の高みにまで持っていった。
それが「道」です。
合気道も、日本古来の武術や柔術を基礎にしています。
技術を体系化しただけでなく、道にまで高めた。
人を殺める技術から生まれながら、争わない武道という境地にたどり着いています。
死を受け入れるからこそ、生が輝く。
争わないという思想を信念として持ち、いつでも死線を越える覚悟を持つ。
それが、仕事や人生の修羅場で、自分や人を生かすことになる。
稽古を重ねるうちに、そのことを静かに悟っていきます。
仕事で活かす武士道は、修羅場から逃げないこと

トラブルは怖い。
一歩前に出たほうが、結局は楽になる。
分かっていても、その一歩をためらうのが現実です。
それでも、トラブルには正面から向き合わないと、また同じようなことに直面します。
形を変えて、逃げた課題は追いかけてくる。
私も、どうやって一歩前に出たらいいのか、分からなかったことがあります。
それでも、このトラブルに向き合うと決めて、対応しました。
やり方は分からないまま、先に決めました。
振り返ると、それが経験になり、自分の成長になっていました。
次のトラブルでは、前より踏み込みやすくなる。
自分にはできる、という自信ができ始めたのだと思います。
リーダーの自覚を持つと、守らなければいけないものが見えてきます。
仕事から逃げていては、守れないときがある。
正面から向き合うことと、相手とぶつかることは違います。
合気道でも、怖くて腰が引けると、技はかかりません。
ミスを隠したり、メールで言い訳を送るのは「逃げ」です。
相手の非を論破しようとするのは「争い」です。
一番怖いけれど、すぐに電話をかけ、まず相手の怒りを真正面から受け止める。
課題からは逃げず、相手とは争わない。
今日の稽古

一歩をためらうとき、こう自分に問いかける。
「ここで逃げたら、何を守れなくなるか」と。
今日も私は、信念のもとに生を輝かせる稽古を続ける。
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