不安で身動きがとれなくなったとき、「最悪の事態を想定しておけ」と言われることがあります。
ところが、想定することすら怖くて向き合えない、ということも起きます。
それは、最悪の手前で止まっているからです。
最後まで見ると、不思議と怖さは消えていきます。
デール・カーネギー氏は『道は開ける』で、最悪の事態に無理やりにでも目を向け、心の準備を固めよ、と言います。そうすれば妄想が消えて、問題の解決に集中できる、と。
そして、その向き合い方を三つの手順で示しています。
合気道で相手の突きを捌くとき、身体でも同じことをしています。
突きが当たったら何が起きるかを知っておくと、突きが怖くなくなる。
カーネギー氏の三つの手順と、それを稽古でどう体験しているかを書きます。
仕事で不安に手が止まったとき、そのまま使える形にしています。
カーネギーが示す、最悪の事態に向き合う三つの手順

悩みにつきものの最大の欠陥は、私たちの集中力を奪ってしまうことです。一度悩みはじめると、気持ちが絶えず動揺して、決断力が失われます。しかし、自分の目を無理やりに最悪の事態へと向けさせ、それに対する心の準備を固めれば、妄想はことごとく消え去り、問題解決のため全力を集中できるような立場に自分を置くことができるのです。
(デール・カーネギー『道は開ける』より)
カーネギー氏が言っているのは、最悪を考えるな、ではありません。
目を向けろ、です。
本の中では、これが三つの手順として紹介されています。
- 「起こり得る最悪の事態とは何か」と自問すること
- やむをえない場合には、最悪の事態を受け入れる覚悟をすること
- それから落ち着いて最悪状態を好転させるよう努力すること
悩みは、集中力と決断力を奪います。
この三つは、それを取り戻すための効果的な方法です。
不安なとき、実際には最悪の手前で止まっている

「最悪のことばかり考えてしまう」と言うとき、たいていは最悪そのものまでは考えていません。
失敗したらどうしよう。評価が下がったらどうしよう。
そこで思考が止まっています。
思考停止したところから先は、妄想です。
どれくらい悪いのかが具体的に分からないので、妄想はいくらでも膨らんでいき、不安でいっぱいになります。
一つ目の手順は、止まったところから、もう一歩先まで進むためのものです。
合気道では、突きが当たったらどうなるかを先に知っておく

稽古で、相手の突きを受けるときのことです。
怖い、怖いと腰が引けていると、相手のちょっとした動きにビクッとして、身体が固まります。
相手が攻撃を仕掛けてこようとした瞬間に、もう固まって動けない状態です。
このとき見ているのは、突きだけです。
当たるかもしれない、という一点しか見ていません。
稽古を重ねると、分かってくることがあります。
もし突きが当たったら、何が起きるのか。
それを知っていると、なんだ、大したことないな、と思えるようになる。
一度そう受け入れておくと、身体から恐怖心が抜けます。
そして恐怖が抜けると、かえって当たらなくなる。こちらの捌きが、相手から読めなくなるからです。
カーネギー氏の一つ目と二つ目の手順を、身体でやっているのがこの場面です。
恐怖が抜けると、相手の全体が見える

恐怖が抜けると、見えるものが変わります。
突きだけを見ていた目が、相手の全体を見るようになる。
どういう体勢で、どういう攻撃をしようとしているのか。動く瞬間すら、感じ取れるようになります。
そうなると、考えることが変わります。
当たるかどうかではなく、全体の中でどう捌くか。間合いにも、自然と身体が反応する。
身体はリラックスして、しなやかなまま。
相手の動きに、素早く身体がついていきます。
三つ目の手順、落ち着いて最悪状態を好転させる、はこの状態のことです。
怖がっているあいだは、ただ当たらないように避けるだけで精一杯になります。
仕事で手が止まったときに使う三つの問い

仕事で不安になったときも、同じ順番で考えられます。
この仕事が難しくてやりきれなかったらどうしよう、と手が止まっているとします。
一つ目。最悪の場合、何が起きるか。
会社に無駄な投資をさせてしまう。評価が下がる。すべて書き出します。
二つ目。それが起きたら、受け入れられるか。
数百万円の損失なら会社は耐えられる。給料が出なくなるわけではない。
書き出してみると、思っていたより耐えられそうだということが見えてくる。
三つ目。それを少しでもよくするために、何ができるか。
上司に正直に状況を説明して対応を相談する。投資の取り止めを進言する。
ここまで来ると、不安の中身が「どうしよう」から「何をするか」に変わっています。
頭の中だけでやると、どうしても手前で止まります。ぐるぐると同じところで悩んでしまうからです。
紙に書くと、最後まで考えることができます。
今日の稽古

不安で手が止まっているとき、こう自分に問いかける。
「最悪の事態を想定し、受け入れてみたか」と。
今日も私は、最悪を受け入れて好転させる稽古を続ける。
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