本を読んで、分かったつもりになる。
動画を見て、できる気になる。
そして実際にやってみると、何もできない。
デール・カーネギー氏は『話し方入門』で、スピーチが上手くなる方法を挙げています。
とにかくスピーチをすること。
それが最初で最後、決して失敗することのない方法だと書いています。
合気道も同じです。
動画で技を覚えても、目の前に相手が立った瞬間、何もできません。
15年以上稽古を続けていますが、基本技はいまでも難しい。
完璧にできたと思えることは、ほとんどありません。
簡単には辿り着けない。
それを先に知っておくかどうかで、続けられるかどうかが決まります。
カーネギーが「決して失敗することのない方法」と呼んだもの
たとえ今まで読んできたことすべて忘れても、これだけはしっかりと覚えておいていただきたい。スピーチでの自信を養うための最初で最後、そして決して失敗することのない方法ーそれは、とにかくスピーチをする、ということです。
(デール・カーネギー『話し方入門』より)
注目したいのは「たとえ今まで読んできたことすべて忘れても」という前置きです。
ここまで書いてきた内容は忘れていい、と著者自身が言っている。
話し方の技術を教える本が、技術よりも場数を上に置いています。
本を読むことと、実際に人前で話すこと。
どちらが先かではなく、どちらが本体かをはっきりさせています。
本と動画は、補助になります

動画で技を覚えたつもりになっても、目の前に相手が立つと、まったくかかりません。
本も同じです。理論は理解できますが、身体が動きません。
本や動画は、補助としては役に立ちます。
どこを見ればいいかを知っていると、稽古で見えるものが変わります。
師範の足捌き、重心の崩し方。知識があると、同じ稽古でも拾えるものが増えます。
ただ、知っているだけで終わると机上の空論になります。
▶︎ わかったつもりを戒める。松下幸之助と合気道に学ぶ「実践と体験」の稽古
三段になっても、基本技は難しいままです
昇段しても、基本技が完璧にできたと思えることは、ほとんどありません。
何度やっても難しい。
同じ技を、何百回、何千回とやってきたはずなのに、なかなかうまくいきません。
上達しないという意味ではありません。
上達するほど、できていないところが見えるようになります。
始めたころは、技がかかったかどうかしか分かりませんでした。
いまは、かかったとしても、どこが雑だったかが分かります。
分かる分だけ、満足できなくなります。
完璧にできたと思える日が来るのかどうかも、分かりません。
「これが気が合うということか」と分かるまで、何年もかかりました

合気道には「気を合わせる」という言葉があります。
意味は、最初から知っていました。
相手と丹田を合わせる、相手とつながる、といった説明も読んでいました。
それでも、感覚としてはまったく分かりませんでした。
何年もかかりました。
ある日、稽古のなかで「これが気が合うということか」と感じた瞬間があります。
あのときはとても嬉しかったことを覚えています。
分かってしまえば単純なことです。
ただ、そこに辿り着くまでは、言葉でいくら説明されても届きませんでした。
同じ説明を何年も聞いていて、ある日突然、同じ言葉が別の意味を持ちました。
カーネギー氏が「とにかくスピーチをする」と書いたのは、こういうことだと思います。
やっているうちにしか、分かる瞬間は来ません。
簡単に辿り着けないと、先に知っておきます
早く上手くなろうとすると、続きません。
三ヶ月で身につくと思って始めた人は、三ヶ月でやめることでしょう。
思ったより進まないからです。
何年もかかると最初から知っていれば、一年目に上達しなくても焦りません。
一にも稽古、二にも稽古。
愚直にやるだけ。
簡単に辿り着けることはない、と肝に銘じておく。
これは諦めではありません。
続けるための準備です。
期待値を下げておけば、小さな進歩に気づけます。
半年前にできなかったことが、今日は一度だけできた。
それが分かるのは、早さだけを求めていないときだけです。
カーネギー氏は、決して失敗することのない方法だと書きました。
失敗するとしたら、途中でやめたときだけです。
今日の稽古

早く上達したくて焦りそうになるとき、こう自分に言い聞かせる。
「一にも稽古、二にも稽古」と。
今日も私は、基本技の稽古を続ける。
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