「何度言ったらわかるんだ」
「なぜ、こちらの意図通りに動いてくれないのか」
仕事で部下を指導する時や、家庭で家族に接する時。
私たちはつい、正論を振りかざしたり、自分の立場を使ったりして、相手を「自分の思い通りに動かそう」と力んでしまいます。
しかし、力で無理やり動かされた相手の心には、必ず「反発」や「不満」のしこりが残ります。
表面上は従っているように見えても、決して自発的に動いてはくれないのです。
人を動かす唯一の秘訣は「自発」
デール・カーネギー氏は、人間関係の歴史的バイブル『人を動かす』の中で、人を動かすための原則を極めてシンプルに断言しています。
人を動かす秘訣は、間違いなく、一つしかないのである。すなわち、自ら動きたくなる気持ちを起こさせること。これが秘訣だ。
(デール・カーネギー『人を動かす』より)
力で脅しても、理屈で論破しても、人は本当の意味では動きません。
唯一の秘訣は、相手の心の中に「自ら動きたくなる気持ち」を起こさせること。
それが最も確実で摩擦のないアプローチだとカーネギー氏は説きます。
「動かされた」ことにすら気づかない滑らかな導き
この「相手が自然に動くようにする」という感覚は、まさに合気道の理合いそのものです。
腕力で相手を強引に動かそうとしても、力がぶつかり合って結局うまくいかないことがほとんどです。
本当の合気道の技は、そうではありません。
相手が動けるところへ、無理なく導いていくのです。
相手の力の向きに決して抵抗せず、そのままの方向に動かし、その流れを生かしてスーッと相手を導く。
その捌きは、相手が「こちらに導かれている」とは感じないほど滑らかでスムーズです。
そのため、相手は動かされたことにすら気づきません。
抵抗感や嫌な思いを抱く暇もなく、「気づけば動いていた」という状態になります。
力ずくで投げられた時のような反発や屈辱感はなく、動いたことに不思議な感覚だけがあり、道場では思わず相手の顔に笑みさえ浮かぶほどなのです。
相手の「欲求」に自分の動きを合わせる
ビジネスや家庭において、私たちはつい「自分のやってほしいこと」ばかりを相手に押し付けてしまいます。
しかしそれは、相手の力の流れを完全に無視して、正面からぶつかりにいっている状態です。
相手の「自発性」を引き出すには、まず相手が何に関心を持ち、何を求めているのか(相手の力の向き)を観察しなければなりません。
そして、相手の欲求とこちらの要望が自然と重なるポイントを見つけ出し、そこへ向かって一緒に歩き出すのです。
相手の力に逆らうのではなく、相手の欲求に自分の動きをスッと合わせる。
相手を思い通りに操作しようとするのをやめた時、相手は初めて、あなたに笑みを向けて動いてくれるのです。
今日の稽古
相手を自分の思い通りに動かそうと、力任せにぶつかっていないか。
正論や権力で人を動かそうとすれば、必ず反発が生まれる。
力で無理やり相手を変えようとしてしまう時、自分にこう語りかける。
「相手の力の向きに抵抗せず、自ら動きたくなるように導こう」と。
相手の流れを生かし、気づけば動いていたという状態を創り出す。
今日も私は、相手を無理に動かさず、自然に導く人間関係の稽古を実践する。
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