自分を大事にするほど、人を大事にできる。松下幸之助と合気道に学ぶ「生かし合う」稽古

争わず生かし合うビジネスパーソン

「一度、コテンパンに言い負かしてやりたい」

職場で理不尽な要求や、いつも攻撃的な人を前にすると、心の奥でそんな衝動が湧き上がることがあります。

正直に言えば、私にもありました。
しかし、議論に勝って相手を黙らせたとしても、後に残るのは虚しさだけでした。

だから私は、どれだけ綺麗事だと笑われても、「相手を打ち負かす」のではなく「お互いを生かし合う」道を選びたいと思っています。
なぜなら、相手を倒して得た勝利の上に、自分の穏やかな日々が続いたことは、これまで一度もないからです。

今日は、松下幸之助氏の言葉と合気道の理合いから、「生かし合う」という生き方の本質を紐解きます。

目次

自分を愛すること、他者を愛すること

松下幸之助氏は、著書『続・道をひらく』の中で、人間関係の核心を突く言葉を残しています。

人間はほんとうは一人では生きられない、これは自明の理である。そしてこの理に目がひらければ、われ人ともに生きる道を考える。自分を大事にしようと思えば思うほど、他人をさらに大事にし、自分を愛すると同じほどに、他人をも愛することにつとめるのである。
(松下幸之助『続・道をひらく』より)

一見、矛盾して聞こえるかもしれません。
「自分を大事にする」なら、他人を押しのけてでも自分の意見を通した方が得なのではないか、と。

しかし、現実は逆です。
例えば職場で、自分の正しさを理解してもらうために部下を言い負かしたとします。

その瞬間はスッキリします。
でも、部下は自発性を失い、結果として自分自身の仕事が増え、自分の首が絞まることになります。

人は一人では生きられない。

「自分を大事にすること」と「周りを大事にすること」は、トレードオフではありません。
自分だけが勝とうとする人は、めぐりめぐって、自分の居場所がなくなっていきます。

頭では痛いほど分かっています。
ただ、思い通りに動かない相手を前にすると、つい自分の意見を押し通したくなる。

この刃のような感情を、どう収めるか。
私はその身体的なヒントを、合気道の道場で教わってきました。

合気道に試合がない理由

あまり知られていませんが、合気道には試合がありません。
相手と勝敗を競わないのです。

その理由はシンプルで、勝ち負けを持ち込んだ瞬間に「生かし合い」の構造が壊れてしまうからです。

合気道の稽古は、基本二人一組で行います。
技をかける「取り」と、攻撃をして技を受ける「受け」を、交互に入れ替えながら進みます。

ここで重要なのは、投げられる「受け」の存在が、実は相手を育てているという事実です。
技をかける方が主役で、かけられる方が脇役というわけではありません。

そして、最終的には、合気道には勝者も敗者もいません。
二人で一つの技を、一つの空間で育てているからです。

相手を負かし、ねじ伏せようとする関係は長くは続きません。
合気道は相手をやっつけるのではなく、「生かし合う」からこそ、お互いに何十年も稽古して成長することができるのです。

勝たなくていい。共に生きる道を考える

正直に言えば、私もまだまだ、道場の外の「実社会」でうまく立ち回れないことが多いです。
忙しさに追われ、余裕を失うと、つい自分の理屈で相手を押し込もうとしてしまいます。

それでも、道場で相手と気を合わせて技を習得するにつれて、お互いに生かし合う感覚を身体感覚で思い出し、「この理合いを、職場でも、家でも、なんとか体現したい」と願わずにいられないのです。

綺麗事かもしれない。
でも、そうありたいと願い、祈り、稽古する。

そして、それができるのが、合気道です。

今日の稽古

相手を「言い負かしたい」という衝動にかられていないか。
互いを生かし合う関わり方を望んでいるのか。

心が波立ち、相手を論破したくなった時、自分にこう語りかける。
「勝たなくていい。ともに生きる道を考えよう」と。

今日も私は、論理で相手を切り捨てるエゴを手放し、「生かし合う」ための稽古を実践します。

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この記事を書いた人

合気道のまさ|合気道三段

人生のどん底から私を救ったのは、名著を「稽古」のように読み返す習慣と、合気道でした。

このブログでは、名著の知恵を合気道の身体感覚で読み解き、しなやかに生きる「型」をお届けします。

かつての私のようなあなたを、心から応援しています。

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