大谷翔平選手をはじめ、世界で活躍するトップアスリートたちが中村天風の教えをバイブルにしていることはよく知られています。
彼らはなぜ、この哲学に惹かれるのでしょうか。
それは、天風氏の教えが単なる精神論ではなく、驚くほど「身体感覚」と直結しているからです。私は合気道の稽古を通じて、そのことを痛感しました。
合気道を習い始めると、必ず「気を出しなさい」と指導されます。
しかし、最初のうちはこの「気を出す」という言葉の意味がまったくわかりません。それどころか、「気なんて非科学的だ」「スピリチュアルで怪しすぎる」と、頭の中で拒絶反応すら起きてしまいます。これまでの人生でそんなものを学ぶ機会はなかったのですから、否定的な考えで溢れてしまうのは当然のことです。
しかし、そこで「そんなものはない」と切り捨ててしまえば、合気道はただの力任せの格闘技になってしまいます。
疑わしい気持ち、懐疑的で消極的な姿勢を一旦脇に置き、ひたすら素直な気持ちで「指の先から気が出ている」「離れた相手と気を結んでいる」とイメージし、積極的に稽古を重ねる。
そうやって愚直に繰り返していくうちに、だんだんと「気を出す」という感覚が頭ではなく身体でわかるようになり、確かな実感として掴める瞬間が訪れます。
言葉を書き換えれば、観念が変わる
実はこの「最初は懐疑的でも、積極的に実践していくことで感覚を掴む」というプロセスは、私たちの心を整え、人生を好転させる方法と同じです。
中村天風氏は、著書『運命を拓く』の中で、日常の何気ない言葉の選び方について、このように説いています。
「おお暑い、ますます元気が出るねえ」。これは積極的。「おお寒い、どうにもやり切れない」。これは消極的。だから、正確に前の積極的な方を善用しなさい。
最初はやり損なうことがあっても、やり損なったら取り消しておきなさい。
「ああ暑い、どうにもやりきれない」
「と昔はいったけど」
とすぐにそこで打ち消しておけばよろしい。
(中村天風『運命を拓く』より)
私たちの心の中にある「観念」が思考となり、それが「言葉」となって口から出ます。
つまり、消極的な観念を持っていると、無意識のうちに「暑い、やりきれない」「疲れた」「どうせ無理だ」という消極的な言葉がこぼれ落ちてしまうのです。
しかし、天風氏は「もしやり損なってネガティブな言葉を口にしてしまっても、すぐに取り消せばいい」と教えてくれます。
「ああ、疲れた……と昔は言っていたけど、今はますます元気が出るね!」と、強引にでも後から打ち消し、言葉を肯定的なものに上書きしてしまうのです。
身体感覚として実感する「言葉の力」
最初は、慣れていない積極的な言葉を口にすることに、合気道の「気を出す」稽古を始めた時と同じような違和感や拒絶反応があるかもしれません。
しかし、この「マイナスの言葉を取り消し、積極的にしていく」訓練を積み重ねていくと、自然と変化が起きてきます。
言葉を積極的に変えることで、自分の根底にあった消極的な観念が少しずつ消し去られていくのです。
言葉が前向きになると、心が軽くなり、不思議と体に活力が湧いてくる。言葉を積極的にすることは、まさに自分の人生に直接的な影響を与えているのだということを、ハッキリとした「身体感覚」として実感できるようになります。
合気道で「気」が出ている感覚が掴めるようになるのと同じように、言葉を変えることで、自分の人生そのものに力強い「気」が満ちていくのがわかるはずです。
今日の稽古
つい「疲れた」「やってられない」と消極的な言葉が出てしまった時、すかさず自分に言い聞かせる。
「……と昔は言っていたけど!今はそれを楽しめる」と。
言葉は気そのもの。言葉を積極的に変えれば、心身の反応は確実に変わる。
今日も私は、消極的な言葉を即座に打ち消し、自分の人生に気を出し続ける稽古を実践する。
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