やるかどうか迷っているとき、人はまず情報を集めます。
向いているのか、続けられるのか、やる意味があるのか。
せっかく調べても不安になり、それ以上の行動が止まってしまうことがあります。
松下幸之助氏は『道をひらく』で、立ちすくんでいても道はひらけない、まず歩め、と言います。
合気道は、実際に歩いてみないと分からない武道です。
15年以上続けて三段になったいまも、分からないこと、できないことはたくさんあります。
分かってから始められる道と、歩いてからしか分からない道があります。
歩かないと分からないことですらも、分かってから始めようとすると、永遠に始まることはありません。
松下幸之助「まず歩まねばならぬ」

他人の道に心をうばわれ、思案にくれて立ちすくんでいても、道はすこしもひらけない。
道をひらくためには、まず歩まねばならぬ。心を定め、懸命に歩まねばならぬ。
(松下幸之助『道をひらく』より)
自分の道は唯一無二。
他人のことが気になっても仕方がない。どうしよう、どうしようと悩んでばかりでは現実は動きません。
松下幸之助氏は、自分でしっかりと歩むことで、そこに自分の道ができていくと説きます。
勝ち負けを競わないので、説明が難しい

合気道は、勝ち負けを競いません。試合で相手を倒したほうが勝ち、という形になっていないのです。
だから何がうまくいっていて、何がうまくいっていないのかが、外から見て分かりにくいという特性があります。
武道でありながら争わない。
この一行を説明するのもなかなか難しい。
強いのかと聞かれても、何を持って強いというのか、その強さの定義から始めることになる。説明だけでは伝わりません。
やれば分かる。ただ、やる人はほとんどいない

稽古をしていると、合気道というものが分かる瞬間があります。
力を入れないほうが相手が崩れる。こちらの気が張っていると、相手は間合いに入ってこられない。
説明ではなく、身体で分かるのです。
ただ、その状態まで来る人はほとんどいません。
分かるところまで行くには、やるしかない。そして、やる前に合気道の本質を理解できる方法はない。
ここに矛盾があります。
合気道とは何か、を納得いくまで理解した上で始めたい人にとって、合気道は永遠に始まらない道になるでしょう。
進歩は遅く、習得は難しい
合気道は、上達が遅い武道です。何年やっても難しい。
三段になっても、師範のようにはできません。
相手とぶつからない。気を合わせ、力をストンと抜いて相手を崩す。
言葉にすれば簡単ですが、身体が思う通りには動きません。
永遠に辿り着けない道のようです。
それでも稽古を続けています。
気を出す。力を入れない。型を繰り返す。
上達のためもありますが、人格を作るための道だとも感じています。
稽古を通じて、自分の内面を磨くことができる武道なのです。
合気道のことを知らない人からは、なんで合気道なんて怪しいものをやっているのか、と変な目で見られることがあります。
でも周りからどう言われようとも、自分には合気道が合っているし、合気道を楽しんでいる。
これからもこの道を歩み続けます。
仕事にも、同じ種類の道がある

仕事にも、やってみないと分からないものがあります。
管理職が向いているかどうかは、なってみないと分かりません。
新しい担当が自分に合うかどうかも、動いてみるまで分からない。
人を育てられるかどうかも、育ててみるまで分からない。
それなのに、動く前に答えを出そうとします。
調べて、考えて、比べて、それでも決まらない。決まらないまま、時間だけが過ぎます。
分かってから動ける仕事もあります。手順が決まっていて、正解がある仕事です。そこでは、調べるほど有利になる。
ただ、自分の向き不向きに関わることは、たいてい調べても出てこない。他人の体験談を読んでも、それはその人の身体で起きたことです。
松下幸之助氏の「まず歩まねばならぬ」は、精神論に見えて、順序の話だと受け取っています。
分かってから歩くのではなく、歩くからこそ分かることがある。
そう戒めてくれます。
今日の稽古

やるかどうか決められず、調べ続けているとき、自分にこう問いかける。
「それは、歩いてからしか分からないことではないか」と。
今日も私は、分からなくても歩き出す稽古を続ける。
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