相手の身になる、は想像ではない。デール・カーネギーと合気道に学ぶ「視点を入れ替える」稽古

相手の視点に立って話をするビジネスパーソン

「これだけ丁寧に説明しているのに、なんで分かってくれないのか」
「なぜ、こちらの意図とは違う動きをしているのか」

仕事をしていると、相手に言葉が「届かない」もどかしさを感じることが多々あります。
そんな時、私たちは「説明の仕方が悪かったのか」「相手の理解力が足りないのか」と、自分と相手の能力に原因を求めてしまいがちです。

しかし、言葉が届かない本当の理由は、能力だけではありません。
私たちが「自分の視点」からしか、言葉を放っていないからです。

相手の目に、自分の言葉はどう映っているのか。
それを知るために「視点を入れ替える」ことの大切さを、今日は紐解いていきます。

目次

もし自分が相手だったら、どう反応するか

人間関係の不朽の名著であるデール・カーネギーの『人を動かす』には、相手を理解するための核心がこう記されています。

相手の考え、行動には、それぞれ、相当の理由があるはずだ。その理由を探さなければならない。そうすれば、相手の行動、相手の性格に対する鍵まで握ることができる。
本当に相手の身になってみることだ。
「もし自分が相手だったら、果たしてどう感じ、どう反応するだろうか」と自問自答してみるのだ。
(デール・カーネギー『人を動かす』より)

相手がなぜその行動をとるのか。

そこには必ず「相手なりの理由」があります。
その理由を知るためには、自分の側から相手を観察するのではなく、「もし自分が相手の立場だったら」と、視点を完全に相手側へ移さなければなりません。

自分の言いたいことや正論を押し付けるのではなく、相手の目で景色を見る。
それが「相手の身になる」ということの本当の意味です。

見えない軌道から入る「当て身」

この「相手の視点から自分を見る」ことの重要性を、私は合気道の当て身で実感しています。

たとえば、相手が打ち込んできた時、片手を相手の中心に向けて出す当て身があります。

この時、自分の視点から見て「相手の顔に向かって、ただ真っ直ぐ手を出す」だけでは、何の効果もありません。
相手からすれば、正面から手が来るのは丸見えなので、まったく怖くなく、そのまま攻撃されてしまいます。

しかし、これを「相手の視点(見え方)」に立って軌道を変えると、効果は劇的に変わります。
正面から出すのではなく、下から剣を振りかぶるように、一教の手で擦り上げる軌道を辿るのです。

すると相手からは、こちらの初動が死角に入って見えません。
相手が「よし、打ち込めた」と思った矢先に、見えない角度から急に当て身が飛んでくる形になり、驚いて身体が大きくのけぞります。

相手の打ち込みが強ければ強いほど効果は増し、時にはその当て身だけで——実際には触れてもいないのに——相手が大きくのけぞり、そのまま倒れてしまうこともあります。

稽古で「受け」を取るから、視点が分かる

ただ単に前から手を出すか。
相手の死角から擦り上げるか。

この違いへの本当の理解は、「相手の視点に立つ」ことで生まれます。

では、なぜ相手からどう見えるかが分かるのか。
それは道場で、交互に技を掛け合い、自分が「受け(技をかけられる側)」として何度も当て身を食らっているからです。

「この角度から来られると、まったく見えないし、怖い」という相手の心理を、身体で知っているのです。

——お恥ずかしい話ですが、仕事となるとなかなかこの通りにはいきません。
私自身、部下や周囲に対して、よかれと思ってただ真っ直ぐ「正論の当て身」を放ち、相手を硬直させてしまうことがあります。

「自分ではできているつもり」でも、いざ視点を入れ替えて相手の立場に立ってみると、自分の言葉がいかに相手の心に響かない、無防備な軌道を描いていたかに気づかされます。

言葉も、技も同じです。
自分の視点だけで放つのではなく、「相手からどう見え、どう感じるか」を知る。

真の理解は、この視点の入れ替えから始まるのです。

今日の稽古

相手に言葉が届かない時、自分の視点から「真っ直ぐ手を出す」だけの伝え方になっていないか。
「もし自分が相手だったら、この言葉をどう受け取るだろうか」と自問自答しているか。

正論をぶつけたくなった時、自分にこう語りかける。
「相手の視点に立ち、見え方を知れ」と。

今日も私は、自分の視点を手放し、相手の身になって考える稽古を実践する。

💡 「相手の身になろうとしても、拒絶されてしまう」と悩んでいる方へ

相手の視点に立とうと努力することは、円滑な人間関係の基本です。しかし、もしあなたがどれほど相手を思いやっても、相手が端から聞く耳を持たず、一方的に言葉の刃を向けてくるような環境にいるのだとしたら。
それはあなたの伝え方の問題ではなく、相手や組織の側に、あなたを尊重する土壌がないサインです。
自分が一方的にすり減る場所から離れ、健全な対話ができる環境を探すために、プロの伴走者と視界を広げるのも一つの手です。
[▶ 休職した大手企業管理職が本音で選ぶ。キャリアコーチング比較

■ こちらの記事もあわせて読まれています

人を動かす人は、まず「受ける」。デール・カーネギーと合気道に学ぶ「聞き上手」の稽古
論破するな、脱力せよ。デール・カーネギーと合気道に学ぶ「押し返さない」稽古
正論は、人を動かさない。松下幸之助と合気道に学ぶ「合わせる」稽古

■ この記事を書くにあたって読み返した本

¥880 (2026/06/08 21:46時点 | Amazon調べ)
Audibleプレミアムプラン 30日間無料体験
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

合気道のまさ|合気道三段

人生のどん底から私を救ったのは、名著を「稽古」のように読み返す習慣と、合気道でした。

このブログでは、名著の知恵を合気道の身体感覚で読み解き、しなやかに生きる「型」をお届けします。

かつての私のようなあなたを、心から応援しています。

≫ 詳しいプロフィールを読む

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次