「部下に正しいことを言ったら、次の日からよそよそしくなった」
「自分の信念を押し通そうとするあまり、周りを傷つけてしまった」……。
仕事でも人間関係でも、自分の「正しさ」や「信念」にこだわってしまい、相手の状況を無視して力任せに進んでしまうことはありませんか?
信念を持つことは大切ですが、相手への思いやりに欠けた正義は、時に人を傷つけてしまいます。
今日は、稲盛和夫氏が説く「真の勇気」と、合気道で学ぶ「受けの怖さを知る者の強さ」から、自他ともに高め合うための心のあり方についてお話しします。
稲盛和夫が説く「真の勇気」とは
稲盛和夫氏は、著書『京セラフィロソフィ』の中で、リーダーが持つべき「真の勇気」についてこう語っています。
真の勇気とは、自らの信念を貫きながらも、節度があり、怖さを知った人、つまりビビりを持った人が場数を踏むことによって身につけたものでなければなりません。
(稲盛和夫『京セラフィロソフィ』より)
私たちは「勇気がある人」というと、恐怖を知らずにガンガン突き進む、強気で豪快な人をイメージしがちです。
しかし稲盛氏は、それは「蛮勇」……つまり、ただの無鉄砲さにすぎないと言います。本当に強い人とは、「怖さ」を知っている人です。
自分が傷つく怖さ、失敗する怖さ、そして自分の力が相手を傷つけてしまうかもしれない怖さを知っている。その怖さを知る感覚があるからこそ、信念を貫きながらも決して暴走せず、相手に対する「思いやり」を持つことができるのです。
合気道「小手返し」のキレと、相手を傷つける恐怖
この「怖さを知るからこその節度」は、合気道の稽古においても欠かせない精神です。
合気道では、自分自身の道を究め、人格を高めるために、真剣に稽古へ向き合います。
しかし、だからといって「力任せに自分のフルパワーを出せばいい」というわけでは決してありません。
たとえば、「小手返し」という手首を極めて投げる技があります。 この技がキレッキレに決まった場合、投げられる側(受け)は、空中で一回転する「飛び受け身」をとらなければ間に合いません。
しかし、もし相手が初心者で、その受け身ができなかったらどうなるか。一瞬で崩されて頭を強く打ちつけるか、関節が完全に極まって手首や肘を痛めてしまいます。
私自身、これまでの稽古の中で、さんざん投げられ、関節を極められる「受けの怖さ」を身をもって知っています。だからこそ、目の前の相手の力量を注意深く感じ取る必要性が痛いほどわかります。
相手が安全に受け身をとれるスピードと技量に合わせて技をかける。受けの怖さを身体で知っているからこそ、真に強さとやさしさを兼ね備えた人間でなければいけないということに気づくことができるのです。
相手を包み込み、ともに高め合う
「相手の力量に合わせる」というのは、決して手抜きではありません。
むしろ、相手の力量を正確に見極めて合わせられることこそ、自分の技量が高い証拠なのです。
ビジネスや日常の対人関係も同じです。
自分の意見が正しいからといって、論破して相手を再起不能にするやり方は三流です。痛みを知る人は、自分の言葉が誰かを傷つける力があることを知っています。
だからこそ、相手の力量や状況を察し、節度を持って相手を包み込むように導くのです。
そうやって互いに気を合わせ、思いやりを持って接したとき、初めて自分も相手もともに高め合っていくことができるのです。
今日の稽古
自分の意見を強く主張したくなった時、一呼吸置いて、自分にこう語りかける。
「正しさを力任せにぶつけていないか。相手への思いやりを忘れてはいないか」
今日も私は、真の勇気を持ち、ともに高め合う稽古を実践していく。
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